2008年4月12日土曜日

メタバース類型~世界の構造・ユーザ目的による分類~

大倉

1月末に作成したレポート。 
簡単に要約しますと、メタバース(ここでは、オンラインでつながっていて、かつ ディスプレーで映し出される バーチャルワールドを指します。)を四つに分類した。その分類の手法は、 ユーザがその世界に求める目的が 単一であるか、様々であるかという 目的性という軸と その世界の設計がユーザに対して、著作権やお金やデザインなどの面で、オープンであるか、もしくは 運営会社のみが徹底して作りこんだせかいである クローズドであるか という軸 二つの軸を使いました。

という感じで、下に本文をそのまま載せます。
時間がないので、ちょっとずれていたりしますが、ご了承を。


0-2、メタバースの全体像

 メタバースについての現状とこれからについて述べていく。






<図1> メタバース 分類図 

(赤い文字:モデル名 黒い文字:各メタバースの名前)

User Community

Game Design

Game Protocol

Internet Protocol

<図2 メタバースのレイヤー>

 図1は、メタバースがどのように分類されるかを示したものである。

まず、この図の軸について、横軸はオープンとクローズドの度合いで分けている。

ここで、一つのメタバースのシステムがどういうレイヤー(層)で分けられているのかを図2で書き表した。ここで、ゲーム・プロトコルとゲーム・デザインは、ゲームのハードウェア機とソフトウェアのような概念で考えていくと分かりやすい。ハードの規格に基づいて、ソフトウェアを開発していき、ハードさえ同じであれば、全てのソフトが使える。

ゲーム・デザインでは、メタバース内の物語設定、ユーザ・インターフェース、物理的環境、法律、制度であり、メタバース運営者が自由に設定できるレイヤーである。ゲーム・デザインの設定次第で、ユーザがモノを創ることや通貨の現実通貨との兌換性が可能となる。(この議論は メタバースの融合モデルでも用いられる)

図1の議論に戻ると、オープンとクローズドであるか否かは、ゲーム・デザイン層がユーザやその他のバーチャル・ワールドや現実世界にとって、開放的であるか閉鎖的であるかである。

 次に、図1の縦軸は、目的志向性(object-oriented)が強いか、社会志向性(social-oriented)が強いかという基準によるものだ。目的志向性とは、そのメタバースへ参加する目的が明確であることを指す。具体例として、World of Warcraft へ参加するユーザは、そのファンタジーな世界観で、武器や魔法を使って、冒険をしたいゲーム性への目的が強い。こうしたことを目的志向性が強いと定義づけた。

 一方で、社会志向性は、ユーザの目的が多様に存在するメタバースを示し、現実の社会に近い。Second Lifeでは、色々な所を観光するユーザやビジネスをするユーザもいる一方で、コミュニケーションするためツールとして使うユーザもいる。こうした多様な目的が存在するメタバースを社会志向性が強いと呼ぶ。

 以上の定義によって、図の分類は出来ている。

 

0-3、各モデルについて

これより各モデルの説明に入っていきたい。

AMMO RPG

このMMO RPG型はいわゆるMMORPG、オンラインゲームが入る。特徴には、ゲーム・デザイン層がクローズドで、独自なものとなっていて、ユーザの目的志向性も強い。運営会社によって、メタバース内の世界の全てが構築されている。

B, Open social

このモデルは、近年登場してきたSecond Lifeやはてなワールドが挙げられる。これらの世界に共通していることは、ゲーム・デザイン層がオープンであり、ユーザの目的も多様である。運営者がメタバース内の全てを構築せず、基盤を整備している。ユーザにメタバース内のモノ(オブジェクト)を作るツールの提供や経済基盤の整備である。その為、ユーザはその基盤上で、コンテンツ作りや経済取引を行い、運営会社に代わって、世界構築を行っている。

他に、このモデルのメタバースは、現実世界との境が綺麗に分けられなくなってきていることも挙げられる。

C, Closed social

このモデルにはmeet-me home といったバーチャル・ワールドが挙げられる。BOpen social型と大きな違いは、メタバース運営者によって、ゲーム・デザイン層の全てを構築している点である。これによって、ユーザが感じるメタバースへかける心理的・経済的負担を減らしている。そして、運営会社がユーザに方向性を導き出すことで、多様な目的性を保ちつつ、ユーザに満足度を提供している。

D, Game on open social

この分類では、現在目立った例がないものの、今後様々なものが出てくるのではないかと考えられる。このモデルでは、図3に描かれているような、open social型のバーチャル・ワールドの上に載るバーチャル世界である。具体的にしていくと、セカンドライフ上に、MMO RPGやシューティング・ゲームなどの新たなバーチャル・ワールドを構築していくことが挙げられる。

 





<図3 game on open social の概念図>




04、メタバースの変遷 各モデルによる考察

次に、メタバースの各モデルのこれまでの経緯について、考察していきたい。

A,MMO RPGの誕生

 オンラインゲームは、1994年から原型が登場してきて、現在のMMO RPGの原型は、96年以降から登場し始めた。MMO RPGは従来のゲームにはないユーザ間のコミュニケーションやバージョンアップによる世界の進化がユーザを魅了し、インターネットでのコンテンツ課金では数少ない成功事例となっている。

B, 経済とガバナンス基盤によるOpen social型の誕生

そうした中で、MMO RPGとはまったく対極的な世界が誕生した。そうした代表例がsecond lifeである。このopen social型の誕生には、メタバース内の経済基盤とガバナンスの基盤の整備である。経済基盤では、バーチャル・ワールドでユーザによって、作られたコンテンツに対して、所有権や知的財産権が付与されるようになってきた。そして、アイテム交換やメタバース内通貨と現実通貨の兌換性といった経済取引の自由化が進められたそして、そうしたコンテンツ作りへのツールがユーザへ提供されるようになってきた。

ガバナンスについては、従来の運営会社によるトップダウン形式の運営からユーザがコミュニティを自治していき、その中で処理しきれない問題を運営会社へゆだねるボトムアップ式になってきた。○章でより詳しく記述する。(湯村さんの派-と)

そうした二つの基盤の整備により、open social型の世界は経済的にも社会的にも発展してきている。

C,  Closed social型の誕生

そうした流れに対して、open social型のモデルへの批判も出てくるようになってきた。物語性や目的性の欠如、ユーザの敷居の高さといったものが挙げられている。そこには、open social型では、あまりにも自由度が高いために、ユーザが意味を見出せないといったことが起きている。

 そうした問題に対して、meet-me やソニーのhomeといったclosed social型が登場してきた。このモデルでは、ゲームの運営者が世界のほとんどを構築することで、ユーザに方向づけをしつつも、ユーザの多様性を保とうとしている。

0-5、メタバースの将来像

 次に、メタバースの各モデルの今後について、考察していきたい。

A, MMO RPG

MMO RPG型はユーザの目的性を満たす為に、独自の世界観を構築する必要がある。その為、メタバース運営者は、ソフトウェアがオープン・ソースにする必要はなく、独自仕様にすることで、むしろ差別化が図れる。現実の世界とはまったく遮断されている独自の世界観へのニーズは今後も残るという意見は、半分以上の方に占めている。(metaverse roadmap 資料より)

B, Open social

ファンタジーな世界観が出せないものの、社会的なプラットフォームとして、このモデルは今後も拡大していくだろう。

今後、経済基盤がより発展し、ユーザがバーチャル・ワールド内で、暮らしていけるような所得を獲得できるようになれば、このバーチャル・ワールドで、暮らして、時々現実世界へ散歩をするという現象が起きてくるだろう。実際に、エバー・クエスト(MMO RPG型のメタバース)のユーザの20%がこうした回答を出ている。

C, Closed Social

 私はこのモデルは今後あまり伸びないのではないかと考えている。理由としては、ユーザの曖昧で、多様な目的を満たすには、運営会社のみで行うのはそもそも困難であるという点。まず、そうしたユーザの目的を把握するのは、現在の研究からも全てを把握するのが難しい状況なので、運営会社も無理なのではないだろうか。また、ユーザの目的を一定の方向付けをすることも難しい。

また、こうした多様な目的を満たすには、そうとうのコンテンツ作りを必要とされるだろう。というのも、ユーザがモノを作れないような状況では、現在open social型で行われているユーザが作るコンテンツ分をも運営会社が構築しなければならないからだ。

 そして、経済面の取引が制限されて、ユーザがこのメタバース上で、自立生活することは困難であろう。

 そうしたことを考慮すると、縦軸が上にあるエリア(social-oriented にある)はユーザへかなりの自由度を与えなければ、そのバーチャル・ワールド自体が発展せずに、破綻してしまうだろう。

 これは、様々な目的が集まるソーシャルな面を持つインターネットがオープンであったことで、発展した歴史に近いように感じられる。

D, Game on open social

この利点としては、運営会社側の運営費用負担の軽減ならびに、ユーザ獲得費用の負担の軽減が挙げられる。MMO RPG型では、独自のメタバースごとに、ゲーム・プロトコルからゲーム・デザインまで全てを開発しなくてはならない。一方で、game on open social型では、ゲーム・プロトコルの全てとゲーム・デザインはそのメタバースが置かれるopen social型のメタバースの運営者によって、構築され、運営者の経済的な負担が減る。

 一方で、ユーザの視点から考えていくと、アバターやアイテムといったID情報の共有化ができ、利便性が高まる。また、各game on open social型のバーチャル・ワールドへの出入りが自由にできる。

このように、マルチバースの一形態(複数の規格に準拠したマルチバース)としても捉えることもできる。(○章メタバースの融合モデルにて、より詳しく後述す)こうした点を考慮して、今後このモデルは発展していくだろう。

 

<参考文献>

Wikipedia

オンラインゲーム

http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%AA%E3%83%B3%E3%83%A9%E3%82%A4%E3%83%B3%E3%82%B2%E3%83%BC%E3%83%A0

MMO RPG

http://ja.wikipedia.org/wiki/MMORPG

ITmedia [Second life はてな版?仮想世界「はてなワールド」β公開

http://www.itmedia.co.jp/news/articles/0712/13/news084.html

on virtual economies Edward castronova 2002

the right to play Edward castronova 2006

virtual worlds: a first-hand account of market and society

Edward castronova 2001

metaverse roadmap overview 2007  http://metaverseroadmap.org/

閲覧日はいずれも2008125